不整脈とは
脈が速くなったり、遅くなったり、不規則になったりといった、脈が一定でなくなる状態を不整脈と言います。脈拍が1分間に100以上ある場合を頻脈、50以下の場合を徐脈と呼びます。すべての不整脈が病気によって起こるわけではありません。例えば、運動時、緊張時、その他ストレスの多い状況、発熱時などに脈が速くなることがありますが、これは生理的な頻脈と考えられます。
脈が不規則に拍動する不整脈の一種として期外収縮があり、多くの方に見られる症状です。カフェインの過剰摂取、飲酒過多、疲労、ストレスなどによって誘発されることがあり、加齢とともに増加する傾向がありますが、ほとんどの場合は心配する必要はありません。
不整脈の原因
不整脈は主に、冠動脈疾患、心臓弁膜症、心不全、先天性心疾患などの心臓病が原因で発症します。肺の病気や甲状腺に異常がある方も、不整脈を発症する可能性が高くなります。
ただし、不整脈は心臓病以外にも、体質や加齢、ストレス、睡眠不足、疲労などによって発症することがあります。不整脈を予防するためには、生活習慣の改善も重要です。
不整脈はストレスも原因?
ストレスにより交感神経が活性化し、不整脈を引き起こしやすくなります。したがって、健康な方や慢性疾患のない若い方であっても、ストレスによって不整脈が発生する可能性があります。ストレスに加えて、疲労、睡眠不足、飲酒過多、カフェインの過剰摂取、喫煙なども不整脈を起こす可能性を高めることが知られています。
不整脈の種類
期外収縮
突然脈が飛んだり、鼓動がドキッと止まったりすることがあります。通常、電流が正しく流れるはずの体の他の部分からの電気刺激によって、心房と心室の筋肉が興奮すると、脈が飛びます。ほとんどの場合は経過観察で十分ですが、症状が重篤な場合や頻繁に発生する場合には、投薬やカテーテル治療が必要になる場合があります。
頻脈
頻脈は、電気を発生させる洞結節が異常に興奮刺激を出しすぎたり、正常な電気回路とは異なる回路を作り、そこで電気がぐるぐる回ったりすることによって起こります。脈拍が不規則になり動悸を起こしたり、脈拍が速すぎて心臓が空振りし、脳への血流がうまくいかなくなり失神したりする場合もあります。頻脈の型によっては生命に関わる恐れもあります。
洞性頻脈
電気を発生させる洞結節からの刺激が増えることを洞性頻脈と言います。このタイプの頻脈の場合は、脈を遅くすることで治療するのではなく、頻脈の原因を調べる必要があります。運動した後や、痛み、飲酒、カフェイン摂取、不安などの日常生活で発生するものから、発熱、脱水、貧血、低酸素症心不全、内分泌異常といった病理学的原因など、さまざまな原因によって引き起こされます。
発作性上室性頻拍
発作性上室性頻拍は、洞性頻拍とは異なり、病的な頻拍発作と言えます。心電図で発見できる場合もあり、薬物治療が有効な場合もあります。突然動悸が起こり、病院に着くと治まるという患者様も多いですが、そのような場合は、ホルター心電図(24時間心電図検査)によって診断が可能です。発作性上室性頻拍と診断されれば、カテーテルアブレーションと呼ばれる根治的治療が適応になる場合もあります。カテーテルアブレーションが必要な場合には、連携する医療機関へご紹介いたします。
心房細動
心房と呼ばれる心臓の小さな部屋は、けいれんを起こしているかのようにブルブルと不規則に収縮します。その結果、心臓の機能が低下し、場合によっては日常生活に支障をきたすような症状が現れることがあります。心房のけいれん性収縮により、心房内で血液が停滞し、血栓(血の塊)が作られやすくなります。血栓が血流を通って脳の血管に到達すると、脳の血管が詰まり、脳梗塞を引き起こす可能性があります。脳梗塞を発症すると、寝たきりになったり、介護なしでは生活できなくなったり、場合によっては死に至るほどの重度の障害が残ることがあります。脳梗塞の予防には、抗凝固剤の服用が必要です。
心房細動は無症状の場合もありますので、健康診断で心電図の異常を指摘されたことをきっかけに治療に繋がることが重要です。また、ご自身の脈を確認する(検脈)ことも効果的と考えられています。
心房細動を治療することは心不全の予防に重要であり、薬物療法やカテーテルアブレーションといった選択肢が治療としてございます。カテーテルアブレーションが必要な場合には、連携する医療機関へご紹介いたします。
心房粗動
心房粗動は、心房細動と似た不整脈ですが、心房が規則的に震える点が異なります。
心房粗動も脳梗塞に繋がる危険性があり、抗凝固薬が必要になります。
徐脈
心臓内での電気の生成や、電気の伝達がうまく行われなくなることによって、脈が遅くなった状態です。心臓の鼓動の頻度が低下し、脳への血流が減少し、疲労や失神を引き起こすことがあります。心臓の動きを遅くする薬や、特定の病気が原因で起こる場合があり、原因がわかっている場合はその病気の治療が優先されます。特定の原因がない場合(多くは自然な老化現象によって起こります)、ペースメーカーの埋め込みが必要になる場合があります。
洞不全症候群
電気を発生させる洞結節からの刺激が減少するために脈が遅くなる状態です。
房室ブロック
心房と心室を繋ぐ房室結節に電気の伝達障害が生じ、脈が遅くなります。脈が完全に遮断されても、心臓はかろうじて拍動できるため、緊急でペースメーカーによる治療が必要になる場合があります。
不整脈の検査
安静時12誘導心電図
不整脈や心筋の損傷を調べるための、最も一般的な検査です。約1分間、ベッドに静かに横たわり、心電図を記録することで、体の表面から心臓の電流を調べます。
ホルター心電図
24時間連続して記録できる心電図検査です。従来の心電図検査では不可能だった時間帯でも検査が可能です。1日分の心電図を記録するので、いつ、どのような種類の不整脈が発生し、その時に何をしていたかを確認できます。
不整脈の治療
抗凝固薬
経口薬には、ワーファリン、プラザキサ、イグザレルト、エリキュース、リクシアナなどがあり、主に心房細動や深部静脈血栓症による脳梗塞の予防や治療に用いられます。
CHADS2スコアは、心房細動による脳梗塞のリスクを評価する指標で、合計スコアが高いほど脳梗塞のリスクが高くなります。
CHADS2スコア | 点数 |
---|---|
うっ血性心不全 | 1 |
高血圧 | 1 |
高血圧 | 1 |
糖尿病 | 1 |
脳卒中、一過性脳虚血発作(TIA)の既往 | 2 |
抗不整脈薬
抗不整脈薬には、脈を遅くするものや不整脈を正常なリズムに戻すものなど、種類は多岐にわたります。不整脈があるからといって必ずしも服用する必要はなく、症状が強い場合や重篤な不整脈が起こった場合などに使用します。
カテーテルアブレーション
電気生理学的検査で異常部位を特定し、高周波電流を流すことで不整脈の根治を目指します。足の付け根の太い血管に専用のカテーテルを挿入し、X線透視で確認しながらカテーテルの先端を心臓まで導きます。そして電極の付いたカテーテルで心臓内部の異常な電気信号が発生している部位を探し、その部位を電流カテーテルで焼灼します。
ペースメーカー
徐脈の治療に用いられる機械で、ペースメーカー本体と、心臓の電気刺激を感知して電気を送るリードと呼ばれる電線で構成されています。リードの先端が心筋に接触して電気刺激を伝え、心臓を動かします。重さは約20gで、ペースメーカー本体とリードは手術によって完全に体内に埋め込まれます。手術の所要時間は1~2時間程度であり、1~2週間程度の入院が必要です。埋め込み後はペースメーカー外来で定期的に経過を確認します。
不整脈で突然死の前兆はある?
めまい、ふらつき、意識消失、体を動かしているときに突然、ドキドキという不快な拍動や、心臓が一瞬止まったように感じた場合は、突然死の前兆であるおそれがあるため、できるだけ早めの受診をお勧めします。特に、ドキドキという不快な鼓動が強く感じられた場合は、脈が極端に速くなる「頻脈」という状態である可能性があります。