深部静脈血栓症とは
深部静脈より深い静脈に血栓ができる病気を、深部静脈血栓症といいます。
突然の足のむくみや痛みなどの症状で発見されることが多いのですが、血栓の場所によっては無症状のこともあります。また、血栓の場所によっては、命に関わることもあります。
静脈血栓は、最初はふくらはぎの静脈にできやすいのですが、膝の裏や太ももの付け根の深部静脈にも血栓ができることがあります。この場合、血栓が肺や他の部位に飛ぶ可能性が高くなるので、急に足が腫れて赤くなったら、早急な検査と治療が必要です。
ふくらはぎが痛い?
深部静脈血栓症の症状
ふくらはぎや、片方の足全体が突然赤黒く腫れ、痛みを伴います。数日間かけて徐々に進行することもあります。放っておくと腫れが続き、皮膚が褐色に変色したり、潰れて潰瘍ができたりすることもあります。肺塞栓症になると、呼吸が苦しくなり、胸が痛くなり、場合によっては命に関わる危険もあります。
深部静脈血栓症は、最近手術を受けた方、がんを患っている方、過去に深部静脈血栓症を患ったことのある方、寝たきりの方、避妊薬などのホルモン剤を服用している方などが発症しやすいことが知られていますが、明確な原因は未解明な部分が大半です。
深部静脈血栓症の合併症
圧迫療法などの治療を行わないと、むくみは慢性的に続き、皮膚の変化を中心に以下のような合併症が起こります。
色素沈着
静脈に血液がたまり、毛細血管が閉塞します。その結果、皮膚は赤黒くなって色素沈着と呼ばれる状態になります。
うっ血性皮膚炎
毛細血管から白血球が漏れ出し、そこから炎症物質が放出されてアレルギーのような皮膚炎を引き起こします。同時に痒みも強くなりますが、痒みのために掻くことでさらに炎症が広がり、色素沈着が進みます。
皮膚の硬化
炎症や皮膚炎を繰り返すと、皮下組織内の硬い繊維が増え、皮膚や皮下組織が硬くなります。皮膚の状態がリンパ浮腫に似た状態になることもあります。
皮膚潰瘍
皮膚炎による痒みの強い部分を掻いて傷ができてしまうと、皮膚が腫れて傷が治りにくくなります。その結果、徐々に傷が大きくなり、ただれや皮膚潰瘍を引き起こします。
また、腫れがひどい場合は、周囲から引っ張られて傷口が広がることもあります。そのため、傷を治療する際には、腫れを抑えるために傷を十分に圧迫することが必要です。
深部静脈血栓症の検査
足の腫れが強く、深部静脈血栓症が強く疑われる方には、体の内部まで見るため超音波(エコー)検査やCT検査を行います。どちらの検査も痛みはほぼありません。また、息の苦しさなど、肺塞栓症の疑いがある場合は、CT検査による診断も並行して行います。
血液検査
Dダイマー
体内に血栓(血の塊)があるとDダイマーが高値になります。当院では10~15分で検査結果が判明します。
血栓性素因
血液検査で血栓ができやすい体質かどうかを調べることができます。当院で診断できる主な病気は以下の通りです。保険適応の関係ですべての検査が受けられるわけではありません。
- プロテインC活性(プロテインC欠乏症)
- プロテインS活性(プロテインS欠乏症)
- 抗カルジオリピン抗体、ループスアンチコアグラント(抗リン脂質抗体症候群)
など
下肢静脈超音波検査
(エコー検査)
下肢の静脈の流れや血栓を調べることができる検査です。腹部は腸内ガスなどが障害となって腹部静脈が正確に観察できない場合があります。
心臓超音波検査
大きな血栓が肺動脈に詰まると、右心室が拡張し、肺動脈の血圧が上昇します。心臓超音波検査(心エコー検査)では、右心室の拡張と肺動脈の血圧を調べることができます。
造影CT検査
超音波検査が苦手とする腹部静脈や肺動脈の血栓を1回の検査で確認することができます。造影剤を使用するため、アレルギーのある方や腎機能が低下している方は、検査を受けるかどうかの判断に慎重な検討が必要です。
深部静脈血栓症の治療
血液をサラサラにする抗凝固薬を使用します。最初は注射で投与し、その後、経口薬のワーファリンに切り替えることが一般的です。後遺症を残さないためには、弾性ストッキングを履いて足を圧迫するのが効果的です。早期に適切な治療を行うことで、肺塞栓症や後遺症を予防することができます。