胆石とは
肝臓は胆汁と呼ばれる消化液を産生し、脂肪やタンパク質の消化を促進します。
胆汁は肝臓から送り出され、胆管と呼ばれる管を通り、胆嚢に貯蔵・濃縮されます。
食事を摂ると、胆嚢が収縮して胆汁を胆管から十二指腸に送り出し、十二指腸や小腸で食物と混ざって脂肪やビタミンの吸収を助けます。この胆汁の成分が、胆汁が通る経路(胆嚢と胆管)で何らかの原因で固まってできたものが胆石です。
胆石の原因
近年、日本人成人の約8%が胆石を持っていると言われるほど、胆石症が増加傾向にあります。この増加には主に①食生活の欧米化により脂肪摂取量が増えた点、②医療診断技術の進歩で無症状や小さな胆石も発見できるようになった点の、2つの理由が考えられます。
胆石は中年以降、特に肥満の40代女性に多いとされています。肥満、不規則な食生活、ストレスなどの生活習慣が影響しています。胆石の原因は未解明ですが、胆汁成分のバランスが崩れることが一因と考えられています。脂質の多い食生活は胆汁中のコレステロールを増加させ、胆汁中で溶けきれないコレステロールが析出し胆石の原因となります。
また、ビリルビンが上昇する溶血性貧血や肝硬変なども胆石の原因となります。なお、胆嚢自体の動きが悪い場合、胆汁のうっ滞が胆石の原因と考えられます。
胆石の症状
急性胆嚢炎の一般的な症状は、上腹部痛(右上腹部痛、心窩部痛)、吐き気・嘔吐、発熱などです。腹痛、特に右上腹部(鎖骨の下のあたり)の痛みが最も代表的な症状です。胆嚢内に胆石があるために起こる胆石発作の場合、激しい痛みを伴う場合が多いです。
胆石の種類
胆嚢結石
胆嚢にできる最も一般的な胆石です。胆石の大部分はコレステロール結石です。
胆嚢結石の場合、胆嚢が収縮して胆石が移動し、胆嚢の出口で詰まると、激しい腹痛が起こります。これを「胆石発作」と言います。
この痛みは、右上腹部またはみぞおちに非常に強い痛みが1~2時間続き、その後消えるのが特徴です。胆石発作は、胆嚢が収縮して胆汁を分泌するため、特に脂っこいものを食べた後に発症しやすくなります。
胆石が胆嚢の出口に長時間留まると、胆嚢内で細菌感染を引き起こし、「急性胆嚢炎」に進行し、発熱、腹痛、黄疸を伴う場合があります。
総胆管結石
総胆管結石は、胆嚢から出る胆管と肝臓から出る肝管が合流する総胆管で形成されます。
これらの結石のほとんどは胆嚢で形成され、胆管に流れ込みます。
症状を起こす可能性が最も高いのが総胆管結石です。総胆管から十二指腸への胆管の出口で結石が詰まると、上腹部に激しい痛みを感じます。これには、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)や発熱(これを「胆管炎」といいます)を伴うことがあります。
胆管結石は「膵炎」を引き起こすこともあります。
胆管結石は胆管を塞いで急性胆管炎を引き起こしたり、膵管を塞いで急性膵炎を引き起こしたりする可能性があるため、胆管結石と診断された場合は治療が必要です。
肝内結石
肝臓内の胆管にできる結石です。肝内結石は胆石の中では少数派ですが、日本を含むアジアではよく見られます。肝内結石はあっても必ずしも症状が出るわけではありません。
肝内結石は胆道がんを発症する長期的なリスク因子であると報告されているため、肝内結石と診断された場合は診察を受けることをおすすめします。
胆石の検査
腹部超音波検査
胆嚢を画面に映し出し、胆石の有無や大きさを調べる検査です。胆石に対する最も一般的な検査法とされています。
胆嚢結石のほぼ100%、総胆管結石の約90%が発見できると言われています。ゼリーを塗った器具を腹部に当てるだけの検査ですので、体に与える影響も苦痛もありません。
血液検査
炎症や黄疸が起こっているかどうかを確認できる検査です。超音波検査では胆嚢結石以外の胆石を確実に検出できないため、血液検査も並行して行います。
胆石の治療
胆石症に痛みなどの症状がない場合には、治療せず経過観察でも問題ありません。ただし、胆嚢結石は腹痛などの症状を引き起こしやすいため、手術が検討されます。胆石症の手術では、胆石のみを摘出しても再発する可能性が高いため、胆嚢全体を摘出します。従来は開腹手術が主流でしたが、現在は腹腔鏡下胆嚢摘出術が一般的です。
腹腔鏡下胆嚢摘出術は傷が小さく、患者様への負担が最小限で済みます。術後の痛みも少なく、早期に日常生活への復帰が目指せます。ただし、腹腔鏡手術が難しい場合には開腹手術が選択されます。炎症などによる胆嚢癒着や胆嚢がんの合併症が疑われる場合は、直接手で確認しながら治療できる開腹手術が適しています。
胆石にお勧めの食事
避けた方が良い食事
- 糖分の多い食事:精製された砂糖など
- コレステロールの多い食事:肉や魚の肝など
- 脂肪分の多い食事:脂肪分の多い肉、バターなど
- 暴飲暴食、過食
積極的に食べた方が良い食事
- ビタミンC:果物、野菜
- タンパク質:肉、魚、大豆製品など
- 水分
- 食物繊維(水溶性):野菜、きのこ、海藻、豆類、果物など
食物繊維は、コレステロールの吸収を抑える働きがあります。コレステロールを含む胆汁の排泄を助ける働きもあるため、毎日の食事に積極的に取り入れましょう。