以下の項目に該当する方は
注意が必要です
- ファーストフードなど脂っこい食べ物を頻繁に摂取している
- 家族に脳梗塞の治療を受けた方がいる
- コレステロールや中性脂肪の値が高いと診断されたことがある
- 高血圧や糖尿病の治療を受けている
上記の項目に当てはまる場合、脂質異常症の可能性があります。脂質異常症は自覚症状が少なく、早期発見が難しい病気です。該当する方は、些細なことでも構いませんので早めにご相談ください。
脂質異常症とは
血液中の脂質の値が基準値から外れた状態を脂質異常症と言います。一般的に評価される項目には、中性脂肪(トリグリセリド)、LDLコレステロール、HDLコレステロールがあります。また、総コレステロールからHDLを引いたnon-HDLコレステロールという指標も近年用いられています。
従来は中性脂肪やLDLコレステロールが高い状態を「高脂血症」と呼んでいましたが、HDLコレステロールが低い状態もリスクがあるため、これらを総称して「脂質異常症」と呼ぶようになりました。
脂質異常症は動脈硬化の一因であり、放置すると心筋梗塞や脳梗塞などの深刻な病気を引き起こす可能性があります。そのため、適切な評価と対策が必要です。
脂質異常症の3つのタイプ
脂質異常症の検査では、血液中の脂質濃度である血清脂質値を調べます。血液中の脂質には3種類あり、コレステロールが2種類、中性脂肪(トリグリセライド/TG)が1種類です。コレステロールには、悪玉と呼ばれるLDLコレステロールと善玉と呼ばれるHDLコレステロールがあります。
脂質異常症のタイプ
高LDLコレステロール血症:悪玉のLDLコレステロールが多い
低HDLコレステロール血症:善玉のHDLコレステロールが少ない
高トリグリセライド血症:中性脂肪(トリグリセライド/TG)が多い
コレステロールについて
コレステロールには、悪玉と善玉の2種類があります。悪玉のLDLコレステロールは動脈硬化の原因となる脂質です。一方、善玉のHDLコレステロールは、動脈壁に沈着したコレステロールを血液中に戻す役割を担っています。そのため、LDLコレステロールがそれほど多くなくても、HDLコレステロールが少ないと動脈硬化のリスクが高まります。総コレステロールが高いことが必ずしも悪いわけではなく、バランスを重視して診断・治療が行われるようになり、高脂血症という呼び方も見直されています。
脂質異常症の発症原因
脂質異常症の主な原因は一般的に、生活習慣の乱れや体質、病気や薬の影響です。
生活習慣の乱れ
過食や高脂肪の食事など、偏った食生活は血中の脂質量を増加させます。現代の日本では、食生活の欧米化により高カロリーな食事が増え、脂質異常症になる人が増加しています。食生活だけでなく、運動不足、睡眠不足、ストレスも脂質異常症に影響を与えます。
体質
遺伝が原因で血液中に脂質が増える体質を持つ場合もあります。この体質は原発性脂質異常症と呼ばれます。遺伝子異常により、生活習慣に関係なく血中の脂質が異常に増えることがあります。
病気や薬の影響
他の病気を患い薬を服用している場合、その薬の影響で脂質異常症を引き起こすことがあります。原因となる薬にはステロイドホルモン剤や経口避妊薬などがあります。また、糖尿病、腎臓病、ホルモンの分泌異常などの病気も脂質異常症を引き起こすことがあります。
脂質異常症の診断基準
脂質異常症の診断は、10時間以上の絶食を行った空腹時の採血で行います。この際、糖分が含まれないお茶や水は飲んでも構いません。
診断基準
LDLコレステロール
140mg/dl以上:高LDLコレステロール血症
120~139mg/dl:境界域高LDLコレステロール血症
HDLコレステロール
40mg/dl未満:低HDLコレステロール血症
中性脂肪(トリグリセライド/TG)
150mg/dl以上:高トリグリセライド血症
Non-HDLコレステロール
170mg/dl以上:高Non-HDLコレステロール血症
150~169mg/dl:境界域高Non-HDLコレステロール血症
Non-HDLコレステロールは、総コレステロールからHDLコレステロールを引いた値です。
境界域の場合
境界域の数値の場合、他の生活習慣病やリスク因子の有無によって治療が異なります。単にLDLコレステロールが高いだけでなく、HDLコレステロールが低い場合も脂質異常症と診断されます。また、高血圧、糖尿病、慢性腎臓病、喫煙習慣、肥満なども動脈硬化の発症や進行のリスク要因となるため、これらの要因も確認することが重要です。
脂質異常症の治療
食事療法
脂質異常症の治療には、エネルギーの過剰摂取に注意し、バランスの取れた食事を心がけることが重要です。以下の点に注意して、食事療法を行いましょう。
① 適正体重の維持
エネルギーを取り過ぎると、肝臓で中性脂肪やコレステロールの合成が促進されます。適正体重を維持するため、エネルギーの過剰摂取に注意しましょう。標準体重は次の式で求められます:
標準体重の求め方
標準体重(kg) = 身長(m) × 身長(m) × 22(日本肥満学会の式)
例:身長が180cmの場合 1.8(m) × 1.8(m) × 22 ≒ 71.28(kg)
② 栄養のバランスを考えて、3食規則正しく食事をする
毎食、「主食・主菜・副菜」を揃えましょう。学校の給食を参考に、バランスの取れたメニューを心がけると良いです。詳細な情報は診察時にお伝えします。
③ 脂肪の質と量に注意する
日常の食事で脂質の摂り過ぎに注意しましょう。特に飽和脂肪酸の過剰摂取を避けることが重要です。飽和脂肪酸は肉の脂身、バター、ラード、ココナッツオイルなどに含まれます。乳製品は1日に200g程度に抑えましょう。また、コレステロールを多く含む食品(卵黄、肉の脂身、レバー、魚卵など)は控えめにし、魚類や大豆製品の摂取を増やしましょう。多価不飽和脂肪酸は悪玉コレステロールを増やさず、中性脂肪を減らし動脈硬化を防ぐ効果があります。
④ 食物繊維を摂る
食物繊維は血中コレステロールを下げる効果があります。毎食、野菜、海藻、きのこ類を摂取しましょう。1日350gの野菜摂取を目安にし、そのうち3分の1以上は緑黄色野菜から摂ると良いです。
⑤ 適度な量の飲酒にする
飲酒は適度な量に抑えましょう。アルコールは1日25g以下が適量とされていますが、病状によって異なるため医師の指示を守りましょう。以下がアルコール20~25gに相当する飲料量です:
ビール 中瓶1本(500ml)
日本酒 1合(180ml)
焼酎 0.5合(90ml)
ウィスキー ダブル1杯(60ml)
ワイン グラス2杯(200ml)
⑥ 食塩を控えめにする
高血圧症を合併すると動脈硬化が進行します。食塩の摂り過ぎは血圧を上げる要因となるため、控えめにすることが重要です。
運動療法
脂質異常症の改善には、中等度の強度の有酸素運動を毎日30分以上続けることが推奨されています。中等度の強度の運動とは、楽に行える程度からややきついと感じる程度の、息が弾むくらいの運動を指します。
運動強度、時間・頻度
運動強度:中等度の強度
時間・頻度:1日30分以上、できれば毎日、週180分以上が理想
毎日運動を行うことが理想的ですが、週3日以上で1週間の運動合計が180分以上になるようにしましょう。時間がとれない場合は、1日10分でも多く歩いたり、階段の上り下りをしたりするなど、短時間でも積極的に運動を取り入れてください。また、内臓脂肪を減らすためには、1日60分以上の運動が推奨されています。
脂質異常症に効果的な運動の種類
多くの酸素を使って脂肪の燃焼を促進する有酸素運動が効果的です。初めて運動を行う場合は、ウォーキングから始めるのがおすすめです。
運動を始める前の注意点
高齢者や心疾患、脳卒中の既往がある方、脂質異常症、メタボリックシンドロームなどの疾患を持つ方、関節症や腰や膝に痛みがある方は、運動を始める前に主治医に相談しましょう。どのような運動が適しているか、どの程度行うべきか、また、どのような状態になったら運動を中止するべきかを確認しておくことが重要です。