動悸・息切れの症状
動悸や息切れは心臓の病気を思い浮かべがちですが、原因はさまざまです。不整脈、心不全、呼吸不全、肺炎、気胸、喘息、COPD、狭心症、心筋梗塞、肺血栓塞栓症、発熱、脱水、甲状腺機能亢進症、貧血、薬剤、不安神経症、過換気症候群などが考えられます。これらの症状は胸で感じることが多く、心臓や肺のどちらが原因か自分では判断しにくいこともあります。「胸が苦しい」「胸がつまる」と感じる場合もあり、動悸や息切れとは認識していない方もいます。「めまい」と訴えて受診し、不整脈が原因だったと判明することもあります。動悸や息切れを自覚した場合、循環器疾患、呼吸器疾患、内分泌疾患など幅広い分野に精通した医師に相談するのが良いでしょう。
動悸や息切れが起こる原因
激しい運動をした直後を思い浮かべてください。心臓が速く鼓動し、胸や耳でドクンドクンと感じ、ゼーゼーと荒く速い呼吸になります。激しい運動をすると筋肉などの臓器が酸素を必要とし、脳が心臓と肺に働くよう命令するためです。しかし、軽い運動で動悸や息切れを感じるのは異常で、病気の可能性があります。心臓や肺の異常があると、安静時や軽い運動でも酸素供給が追いつかず、動悸や息切れが起こります。甲状腺機能亢進症では組織の代謝が亢進し、貧血では酸素運搬が不十分になるため、同様の症状が現れます。また、臓器に問題がなくてもストレスや不安感などから脳が勝手に命令を出し、動悸や息切れを起こすこともあります。
緊急性の高い動悸・息切れ
下記のような症状が動悸・息切れと一緒に現れた場合、すぐにご相談ください。
- めまい
- ふらつき
- 失神
- 呼吸困難や息苦しさ
- 冷や汗
- 胸痛
- 吐き気・嘔吐感
動悸・息切れの検査
安静時12誘導心電図検査
ベッドに横たわり、手足と胸部の12カ所に電極を取り付け、心臓の筋肉が興奮した時の電気的活動を記録します。所要時間は約5分です。
ホルター心電図
ホルター心電図は、心臓に装着して24時間連続心電図を記録する手のひらサイズの携帯型心電計です。1日中装着しておくことで、無症状の不整脈や一時的な心電図では検出が難しい異常を検出することができます。
胸部X線検査
胸部X線検査では、不整脈による心不全の症状を発見することが可能です。
心臓超音波検査
心臓超音波検査(心エコー検査)は心臓の収縮能力、弁の動き、筋肉の厚さ、心房と心室の大きさに関する情報を提供します。これにより心臓病の有無を確認することが可能です。
動悸・息切れの治療
脈が飛ぶ・胸がつまる
「脈が飛ぶ」、「胸がつまる」といった期外収縮の症状は、頻度が高くなければ心配する必要はなく、投薬せずに経過観察で大丈夫です。症状が強かったり頻度が高かったりする場合は、安定剤によって症状を抑えることがあります。
不規則な脈
脈が不規則になる心房細動は、心臓に血栓を作り脳梗塞に繋がるおそれがあります。
脳梗塞のリスクを評価し、リスクが高い場合は、抗凝固療法で血栓を予防します。近年はカテーテルアブレーションなどの根治治療が行われることも多くあります。カテーテル治療などが必要な場合は、連携する医療機関にご紹介いたします。
脈拍が1分間に130回以上続く
発作性上室性頻拍や発作性心房細動などの頻脈性不整脈は、緊急の対応が必要になる場合があります。心電図で頻脈が確認された場合は、救急治療のため専門医療施設に搬送される場合もあります。
心機能低下による「心不全」
心機能の低下により心不全が起こると、肺に水がたまり、咳、喘鳴、息切れなどの呼吸器症状が前面に出てきます。胸部X線検査やCT検査で「肺水腫」が確認された場合は、入院治療が可能な医療機関で酸素療法、利尿剤、強心剤などで治療します。
喘息・
COPD(慢性閉塞性肺疾患)
息切れの原因が喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)などの呼吸器疾患と考えられる場合は、呼気一酸化窒素や肺機能検査、CT検査などで鑑別診断を行い、気管支拡張薬の吸入や抗炎症薬の吸入などで症状を抑えます。
その他、心臓や肺に問題が
ない場合
心臓や肺に問題がなく、血液検査で貧血や甲状腺機能の異常が見つかった場合は、原因のさらなる調査が行われます。例えば、貧血の原因が鉄欠乏によるものであれば、鉄剤を服用することで貧血の改善とともに動悸や息切れの改善が期待できます。バセドウ病による甲状腺機能亢進症の場合は、抗甲状腺薬などの治療で動悸が緩和されます。
脈拍のセルフチェック
- 手首の内側、親指側の骨と筋肉の間に人差し指と中指の2本を置きます。
- 脈を感じるまで、それらの指を徐々に強く押し下げます。
- 15秒間に脈を感じる回数を数えます。1分間に50~100回が正常な心拍数です。
- 拍動数とは別に、ペースが一定であることも確認します。
脈を探るポイント
- 脈を探るときは、押すのではなく、脈の上に指を置く程度にします。
- 人差し指と中指に加えて、薬指を使っても脈の位置を確認しやすくなります。
- 強く押しすぎると脈を感じにくくなります。少し強めに置く程度にしてください。