肺がんとは
肺がんは、肺の気管、気管支、肺胞の一部の細胞が何らかの原因でがん化することで発症します。進行すると、がん細胞の数が増え、周囲の細胞を破壊し、血液やリンパ系を介して転移します。肺がんが喫煙と関係していることは広く知られていますが、喫煙とは関係なく発症する肺がんも多く、特に日本人女性は肺がんの発症率が高いとされています。
その結果、肺がんは日本人の死亡原因の第1位となり、現在も増加傾向にあります。
肺がんの原因
肺がんの原因はまだわかっていませんが、喫煙が肺がんの原因、あるいは誘因となることはわかっています。タバコに含まれるタール由来の発がん物質が体内に入り、多くの遺伝子を傷つけるためと言われています。喫煙の他、ラドンガス、ディーゼル粒子、職業性クロム化合物、アスベスト(石綿)、PM2.5なども肺がんの原因、あるいは誘因となる可能性があります。
肺がんの症状
肺がんに、これといった特有の症状はありませんが、息苦しさ、発熱、咳、痰、血の混じった痰(血痰)、動悸、胸痛などの症状から、肺がんの診断に繋がることがあります。
最も一般的な症状は咳と痰です。ただし、これらの症状は風邪や気管支炎でもよく見られます。血痰は気管支拡張症や進行した肺結核でよく見られ、発熱も風邪や気管支炎でよく見られます。息切れや動悸は慢性閉塞性肺疾患や心臓病でもよく見られ、胸痛は心筋梗塞、狭心症、大動脈瘤、気胸、胸膜炎でよく見られます。
このように肺がんの症状は多岐にわたるため、症状だけで診断することはできません。このため、診断を確定するためにさまざまな検査が行われます。
肺がんの初期症状で
肩こり?
肺がんは、肺の細胞が異常に増殖することによって起こります。この異常増殖により周囲の組織や神経が圧迫され、肩こりなどの症状を引き起こします。特に、肺の上部に発生した肺がんは、鎖骨の下や肩の周りの神経を刺激し、肩こりを引き起こすこともあります。
肺がんの検査
胸部X線検査
胸部X線検査は肺野部(肺の末梢部分)のがん発見に有効です。集団検診で用いられることが多く、自覚症状がない時期に肺がんを発見しやすい検査です。
ただし、小さながん(2cm以下)は肋骨や血管に隠れて発見が難しく、肺門部(肺の入り口)のがんは気管支や心臓、胸骨、血管が重なってX線検査では写りにくい場合があります。
喀痰細胞診
肺門部(主に太い気管支)のがんを発見するのに有効な検査です。がん細胞は痰の中にこぼれ落ちるので、それを採取して顕微鏡で調べます。利点としては、痰を排出するだけなので、検査自体が非常に簡単な点が挙げられます。
しかし、肺の一番下にある末梢肺ではがん細胞が採取できないため、最低でも3回の検査が必要であること、検査結果が正常でも肺がんでないと断言できないこと、1回の検査でがん細胞を見逃すリスクがあることなどが欠点として挙げられます。
胸部CT検査
胸部CT検査は、早期発見検査で異常が見つかった場合に行われます。
X線を用いて胸部の円形断面の断層像を撮影し、コンピュータ上で画像を解析する検査で、X線検査を発展させたものです。
X線ではわかりにくいかすかな影も映し出すことができ、さまざまな方向から肺を映し出すこともできます。気管支や心臓、血管の重なりによる死角がなく、小さながんも発見できます。
肺がんの治療
肺がんの主な治療法は、手術、化学療法(抗がん剤)、放射線療法の3つに大別されます。それらの治療法のうち、どれを選択するかは患者様の年齢や合併症などの背景因子、PS(体力を5段階評価したもの)と呼ばれる全身状態、がんの進行度合い、組織型(腺がん、扁平上皮がん、小細胞がんなどの分類)を加味して包括的に検討します。
胸部X線異常を指摘されたら
胸部CT検査を受けましょう
胸部X線写真の異常がすべて肺がんとは限りません。
肺炎や結核の病歴による傷跡もX線写真の異常陰影として現れることがあります。
胸部X線写真の異常で来院された場合は、専門医が再度X線写真を確認し(前回のX線検査から時間が経っている場合は、比較のために再度撮影することが多いです)、次回の精密検査を決定する前に詳しく診察します。
必要に応じて、X線検査で確認された異常な影をより詳しく調べるために胸部CT検査をご案内させていただきます。