気胸とは
気胸は肺に穴が開き、胸痛、咳、息切れなどの症状が出る病気です。肺の表面に嚢胞(ブラと呼ばれることもあります)と呼ばれる薄い袋ができ、それが破裂することで穴が開きます。これにより肺から胸腔に空気が漏れ、破裂したタイヤのように肺が潰れて症状が出ます。
症状は突然現れ、再発率も高いです。嚢胞ができたり破裂したりする正確な理由はまだわかっていません。
気胸になりやすい人
- 10代、20代の若い男性(女性は男性より罹りにくいとされています)
- 背が高くて痩せている方(この体型の方に気胸が起こりやすい理由は不明です)
- 肺にブラ(嚢胞)をお持ちの方
- 運動や喫煙など、肺に負担をかける習慣のある方(患者様の約70%が喫煙者と言われています)
気胸の症状は
「深呼吸すると背中が痛い」?
気胸の症状としては、突然の胸痛や呼吸困難などが挙げられます。胸痛を引き起こす病気は心臓病など多岐にわたりますが、気胸の特徴としては、深呼吸をすると痛みを感じることです。場合によっては背中に痛みが生じることもあります。
気胸の原因
外傷による気胸
外傷性気胸
交通事故や高所からの転落により肋骨が折れて肺に刺さり、穴が開いた場合に発生します。
医原性気胸
病院での検査や、肩や胸に鍼を刺す治療中に肺が傷ついた場合に起こります。また、鍼治療中に肺を傷つけて気胸が生じることもあります。
自然気胸
原発性気胸
肺に病気のない方に起こる気胸です。気胸は、肺の表面にあるもろい風船のような袋(ブラまたはブレブと呼ばれます)が破裂して穴が空くことで起こります。この風船のような袋は、10~30歳の背の高い痩せた男性に起こりやすいと言われています。
続発性気胸
肺に病気のある方に起こる気胸です。COPD、肺がん、間質性肺炎、結核、非結核性抗酸菌症などの患者様の肺は脆くなっているため、何らかの原因で肺に穴が空いて気胸になります。
女性には、月経の前後に起こる特殊な気胸(月経随伴性気胸)のリスクもあります。
子宮内膜症がある方や中絶手術後の方では、子宮内膜の成分が血流に乗って肺に移行することがあります。月経中にこの成分が剥離し、肺に穴が開いて気胸になることがあります。
気胸の検査
X線検査によって、肺が収縮していることがわかります。軽度の気胸の場合、X線検査では診断がつかず、CT検査によって、ようやく診断がつく場合もあります。
肺が拡張して気胸が治ったら、CT検査を行います。CT検査では肺の構造を詳しく見ることができ、肺の穴がどこかに隠れている原因となった病気を詳しく調べることが可能です。
気胸の治療
安静
気胸が軽度で症状がない場合は、そのまま安静にして経過を観察します。場合によっては胸部X線検査で確認を行いながら、穴が自然に閉じるのを待ちます。
胸腔ドレナージ
中等度以上の気胸の場合、胸腔内に溜まった空気を細い管で体外に排出する胸腔ドレナージが行われます。この処置では、肋骨の間に麻酔を施し、小さな切開を入れ、ドレーンバッグ(箱)に繋がれた胸部ドレーン(細い管)を挿入します。
ドレーンバッグは、外からの空気を逆流させずに、漏れた空気を排出するように設計されています。ドレーン挿入後、胸部X線検査を行い、ドレーンが正しい位置にあることを確認します。肺が膨張してドレーンから空気が漏れなくなったら、ドレーンを取り除きます。
しかし、漏れる空気の量が多く、肺が十分に膨張しない場合は、陰圧をかけて吸引力を強め、肺を膨らませます。また、自然に穴が閉じない場合は、ドレーンから自己血や薬剤(タルク、ピシバニル、ミノマイシンなど)を注入し、肺を包んでいる臓側胸膜と胸壁側の胸膜である壁側胸膜を癒着させる胸膜癒着術が行われます。
手術
気胸の手術では、気胸の原因となっているブラを開胸手術または胸腔鏡手術によって取り除きます。胸腔鏡手術が現時点で最も一般的な方法となっています。全身麻酔後、胸部に1~2cmの皮膚切開を3ヶ所行い、そのうちの1ヶ所から胸腔鏡(カメラ)を挿入し、他の切開部からは専用の器具を挿入する方法です。胸腔鏡を通してモニターで画像を見ながら、器具でブラを取り除きます。手術が必要な場合は、連携の医療機関にご紹介します。