下肢静脈瘤とは
下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)は足の血管の病気です。文字通り、血管(静脈)がコブ(瘤)のように腫れた状態(静脈瘤)です。
下肢静脈瘤は良性の病気ですので、急に悪化したり、命を脅かしたりすることはないためご安心ください。ただし、足のだるさやむくみなどの症状が慢性的に起こり、生活の質(QOL)を低下させることがあります。まれに皮膚に湿疹や潰瘍ができ、重症化することもあります。
下肢静脈瘤の症状
- 足のむくみ
- 足のかゆみ・湿疹
- 足の色素沈着
- 足の潰瘍
- 足のこむら返り(つり)
- 足の血管が浮き出て見える
- ふくらはぎの疲労感や重苦しさ
- 足がほてる、または熱く感じる
- 足がムズムズする、不快感がある
など
下肢静脈瘤の症状が
起きやすい時間帯
下肢静脈瘤は主にふくらはぎに見られます。静脈瘤は足に血液が溜まることで発症するため、午後から夕方にかけて症状が悪化する傾向があります。
下肢静脈瘤になりやすい方
妊娠・出産経験のある女性
女性は妊娠・出産の負担により静脈瘤を発症しやすくなります。特に第二子以降のご出産、出産回数が増えるほど発症や悪化のリスクが高まります。
立ち仕事・デスクワーク
立ち仕事で長時間立っていると、脚に血液が滞り、静脈瘤ができやすくなります。
また、デスクワークで長時間座り続けることでも、血液が滞りやすくなります。
激しいスポーツ
足に外傷を与えるようなスポーツをしている、またはしていた方に発症する例も少なくありません。
肥満
肥満になるとお腹の脂肪の圧迫により腹圧が高くなり、下肢静脈や弁に大きな負担がかかります。また、血中脂質とコレステロール値が高いと、静脈瘤の痛みを引き起こす血栓性静脈炎を発症するリスクが高まります。
加齢
逆流防止弁の機能は加齢とともに低下しますが、脚への負担が蓄積し、負荷が大きくなります。特に60~70歳代の発症率が高まります。
遺伝
下肢静脈瘤を患ったことのある方が血縁者にいらっしゃる場合、発症しやすい体質が遺伝している可能性があります。下肢静脈瘤は遺伝の場合、男女を問わず、また年齢に関係なく発症します。
下肢静脈瘤の種類
下肢静脈瘤は、静脈が皮膚の上に大きく浮き出ている「伏在型(ふくざいがた)静脈瘤」と、それ以外の軽症静脈瘤の2種類に分けられます。伏在静脈瘤は徐々に悪化し、静脈のこぶが大きく盛り上がります。このタイプもだるさや疲れやすさなどの症状を引き起こし、進行すると外科的治療が必要になります。
軽度の静脈瘤で最も多いのは、赤い血管がくもの巣のように皮膚に広がって見える「くもの巣状静脈瘤」です。中高年の女性に多く、自覚症状はほとんどありません。
くもの巣状静脈瘤が伏在型静脈瘤に進行することはありませんが、くもの巣状静脈瘤と伏在型静脈瘤が同時に発生することがあるため、超音波検査で伏在型静脈瘤の有無を確認します。
下肢静脈瘤の治療
下肢静脈瘤の治療には、弾性ストッキングによる圧迫療法、注射で静脈を固める硬化療法、手術の3種類があります。手術には、静脈を引き抜く「ストリッピング手術」と、静脈をレーザーで焼く「血管内レーザー治療」の2種類があります。それぞれに利点と欠点があり、治療後の痛みの程度や治療費にも違いがあります。
重要なのは、静脈瘤の種類や程度を正しく把握し、患者様の年齢や生活習慣、ご希望などを十分にお聞きした上で、適切な治療法を選択することです。その際、手術が必要と診断された場合は、提携医療機関で当院院長による手術を行います。
下肢静脈瘤の予防
医療用弾性ストッキングの
着用
足に適度な圧力をかけることで、血液が滞留するのを防ぎ、血管の拡張を防ぐことができます。医療用の弾性ストッキングは当院でご購入いただけます。
生活習慣の改善
下肢静脈瘤を引き起こす要因の一つに肥満があります。
規則正しい生活、適度な運動、バランスのとれた食事を意識し生活習慣を整えましょう。
脚のストレッチ・
マッサージ
かかとを上げ下げする動作を繰り返し、ふくらはぎの筋肉を伸ばす運動がお勧めです。お風呂でマッサージすることなども効果があります。
足を高くして寝る
睡眠時には膝の下にクッションや枕を置くなどして、足を心臓の高さより高く保ちましょう。そうすることで、足から心臓へ血液が流れやすくなります。
長時間の立ちっぱなし、
座りっぱなしを避ける
仕事などの理由でやむを得ない場合は、足踏みをする、かかとを上げ下げするなどの小さな動きを繰り返すだけでも効果があります。